
八日目の蝉 角田光代
「なぜ私なんだろう」がこの本の主題だと思う。
主人公は物心が着く前に誘拐されて、そのまま4歳まで犯人に育てられてしまう。そして4歳のときに犯人が捕まり、本当の家族に返されるのだが、その犯人が父親の浮気相手だったことや、一度も会ったこともない人を、いきなりお母さんと呼ばなければならない苦痛で、家族の中は常にギクシャクとした空気が漂ってた。そのギクシャクとした空気を感じるたびに、主人公は「なぜ私がだけがこんな目に遭わなければならないのだろうか、なぜ隣の麻里ちゃんじゃなかっただろうか?」と、いつも思う。
僭越ながら私も先天性の心臓病である。子供の頃は、なぜ自分だけがこんな病に苦しまなければならないのかと、両親を恨んだ。
でもこの年になると、「なぜ自分が?」がなんて、大なり小なり誰にでもあり、「なぜ自分が?」の集大成が自分そのものだということが分かってきてた。多分その事を、この本は伝えたかったんだと思う。
余談ですが、この本は453ページの2章立てなっています。普通なら5章ぐらいになっていいページ数なので、とってもその章の変わり目が気になります。そして2章の最初を読むと、「なるほどねー」と頷いてしまう設定になっています。
作家もこのくらいのレベルになると、そういうことでも読者の興味を引けるようになってくるのですね。飽くまでも余談ですけど。